スーツ ベントの選びかた!センターベントとサイドベンツの違いは?

スーツのベントに関する知識! 着こなし
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スーツの後ろ姿を見て、「なんだかちょっと気になるな」と感じたことがある方もいるかもしれません。特に「ベント」と呼ばれる背中の切れ込みについては、何のためにあるのか、どんな種類があるのか、意外と知られていません。

ベントには、ノーベント・センターベント・サイドベンツ・フックベントの4タイプがあり、それぞれフォーマルさや動きやすさに違いがあります。

この記事では、ベントの成り立ちや役割をはじめ、各タイプの特徴やどんな場面に合うのかをわかりやすくご紹介します。さらに、体型やスーツのシルエットとの相性、選び方のポイントについても解説していますので、後ろ姿まできちんと整えたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。

スーツのベントとは

スーツのベントとは、背中下部に設けられた切れ込みのことです。着用時の動きやすさやシルエットの美しさを引き出すための工夫として取り入れられています。既製品ではしつけ糸で留められている場合が多く、着用前に糸を切って取り除く必要があります。

ここからは、由来や重要性について解説します。

ベントの由来

スーツの背面にある切れ込みは、もともと装飾的な要素ではなく、実用性を重視して考案されたデザインです。その起源は19世紀のイギリスに遡ります。貴族が乗馬する際、ジャケットを着たままで鞍にまたがりやすくするため、上着の中央にスリットを入れるという工夫が施されたとされています。

この工夫が、現在の「センターベント」の起源です。一方、サイドベンツは、中世の戦士たちが剣を携える際に、腰回りの動きを妨げないように両脇を開けたデザインに由来しています。

ベントの重要性

スーツを選ぶ際、多くの人は色やサイズに目を向けがちですが、後ろ姿の印象も同じくらい大切です。特にビジネスシーンでは、相手に与える第一印象を大きく左右する要素となり得ます。

背面に無頓着だと、清潔感や誠実さが欠けて見えることもあります。逆に、体型にフィットしたラインが整っていれば、相手に好印象を与えることができます。

ベントはジャケットの後ろ姿に立体感を与え、動きに応じた自然な広がりを生み出すため、全体のバランスが整いやすくなります。ベントのデザインは単なる装飾にとどまらず、見た目の清潔感や信頼感に大きく影響する重要な要素と言えるでしょう。

ベントの種類とフォーマル度

スーツ用のベントには、以下の4種類があります。

  • ノーベント
  • センターベント
  • サイドベンツ
  • フックベント

スーツのベントは、種類によってフォーマル度が異なります。最もフォーマル度が高いのは切れ込みのないノーベントで、礼服やタキシードなどに用いられます。

次にフォーマルなのはセンターベントで、ビジネススーツに幅広く採用されています。サイドベンツはジャケット単体でのスタイルやダブルスーツに適しています。ビジネスにも採用されることもありますが、ややフォーマル度にかけるので、割合としては6対4、あるいは7対3でセンターベントの方が多いでしょう。

フックベントはかなりユニークな存在で、ブレザーなどスポーティーでややカジュアル寄りの印象を持つデザインです。

ここからは、それぞれの特徴について解説します。

ノーベント

ノーベントとは、ジャケットの背面に切れ込みがない仕立てのことを指します。動きには多少の制限があるものの、背中がすっきりとまとまり、上品で整った印象を与えるのが特徴です。

このスタイルは主にフォーマルな場で選ばれ、略礼服やタキシードなどに多く見られます。ベントがないことで、立ち姿に威厳が生まれ、エレガントさを重視するシーンにぴったりです。

冠婚葬祭やパーティーなどフォーマルな場に適したノーベントですが、流行によってビジネススーツにも採用される時があります。

センターベント

センターベントは、ジャケットの背面中央に縦のスリットが1本入ったデザインです。もともとは乗馬時に裾が鞍に干渉しないように工夫されたもので、現在ではビジネススーツの標準スタイルとして広く定着しています。

動きやすさと見た目のバランスが絶妙で、クセのないシルエットを生み出すため、どの年代にも自然に馴染みます。特に着丈が短くスリムなスタイルとの相性が良く、20代を中心とした若いビジネスパーソンに支持されているデザインです。

シンプルな印象を持つセンターベントは、オーソドックスなビジネススーツにも取り入れやすく、選択に迷った際の定番としてもおすすめです。ただし、ヒップにボリュームがある場合、ベントが開いてシルエットが崩れる可能性があるため、その点には注意が必要です。

サイドベンツ

サイドベンツは、ジャケットの背面両側にスリットが入ったデザインです。もともとは軍服由来の構造で、威厳のある雰囲気や落ち着いた印象を与えるため、キャリアを重ねたビジネスパーソンや、英国調のダブルスーツを好む方に最適です。

現在では、スポーティな印象を与えるデザインとして広く定着しており、ジャケパンスタイルに合わせた単品ジャケットなどにもよく見られます。両サイドにスリットがあることで可動域が広がり、動きやすさを提供するとともに、ヒップ周辺の張りをカバーしやすい点も大きな利点です。

スラックスのポケットに手を入れても、全体のシルエットが崩れにくく、姿勢や所作も美しく保つことができます。ただし、着丈が短すぎると優雅さが失われるため、丈のバランスには十分な配慮が必要です。

フックベント

センターベントとよく似ていますが、切れ込みの根元が鍵型(フック)になっているのが大きな特徴です。根元がステッチで補強されているので万一無理に引っ張られても裂けにくく耐久性が高まります。実用性と装飾性のバランスがうまく取られているデザインといえるでしょう。

アイビールックやアメトラとも呼ばれるアメリカン・トラディショナル スタイル専用の特徴的なデザインとして知られており、定番から抜け出し、個性を表現したい人向けのデザインといえるでしょう。

ベントの選び方

選ぶ際は、以下3つのポイントに着目しましょう。

  • 着用シーン
  • シルエット
  • 動きやすさ

それぞれのポイントについて解説します。

着用シーン

主な着用シーンは、以下のとおりです。

  • センターベント:日常のビジネスシーン、就職活動、リクルートスーツ
  • サイドベンツ:単品ジャケット、ダブルスーツ
  • ノーベント:冠婚葬祭やパーティーなどのフォーマルウェア
  • フックベント:アメリカン・トラディショナル スタイル、ブレザー向け

センターベント

清潔感と誠実さを演出できるため、新社会人や若手ビジネスパーソンに適しています。リクルートスーツの定番仕様で、あらゆる年代や業種において好まれるオールラウンドな選択肢です。

サイドベンツ

シングルスーツに合わせる場合は威厳のあるスタイルとなり、中堅以上のビジネスパーソンにおすすめです。また、ダブルスーツやジャケパンスタイルにも適したデザインです。

ノーベント

略礼服やタキシードなど、フォーマルな装いに最適なデザインです。冠婚葬祭に用いられることが多いですが、流行の変化により、普段使いのスーツに採用される場合もあります。

フックベント

アメリカン・トラディショナルスタイルを好む方に向けた、特定のニッチな選択肢です。

シルエット

ベントを選ぶ際には、ジャケット全体のシルエットとのバランスを考慮することが大切です。体にフィットした細身のスーツを選ぶ場合、背中央にスリットが入ったセンターベントが最適です。ウエストからヒップにかけてすっきりと見せやすく、短めの着丈とも相性が良いです。

一方、ゆったりとしたシルエットや長めのジャケットには、両サイドに開きがあるサイドベンツが適しています。裾が自然に広がり、動きの中で優雅な印象を与えやすくなります。

自分の体型や好みに合わせて、シルエットを美しく引き立てるベントを選ぶことが、スーツをよりおしゃれに仕上げる鍵となります。

動きやすさ

日常的に動き回ることが多い方にとって、スーツの可動性は重要な要素です。ジャケットの両脇にスリットが入ったサイドベンツは、脚さばきや立ち座りがしやすく、快適な着心地を提供する構造となっています。ただし椅子の形状によってサイドベンツが引っかかりやすい場合もあるので注意が必要です。

外回りが多い営業職や、一日中移動が続くようなスケジュールには、窮屈さを感じにくいサイドベンツが適しています。対照的に、センターベントはすっきりとした見た目を演出しますが、裾の開きが一か所に限られるため、動きやすさの面では少し劣ることがあります。

シーンに応じて、機能性と見た目のバランスを考えた選択が重要です。

ベント以外に大切なポイント

ほかにも、以下4つのポイントも意識しましょう。

  • 肩幅
  • 着丈
  • 袖丈
  • 胸回りや胴回り

それぞれのポイントについて解説します。

肩幅

スーツを着こなす上で、肩幅のフィット感は基本的な要素でありながら、見落とされがちなポイントです。理想的な肩幅は、袖付の脇の縫い目が自分の脇と一致し、自分の肩先と袖山がしっかりと合っている状態です。

袖山の位置がずれていると、背中や腕に不自然なシワができ、全体のバランスが崩れて見える原因となります。特に腕を動かす際に支障をきたしやすいため、注意が必要です。

また、肩に対してジャケットが小さすぎると動きづらさを感じ、大きすぎると肩先が落ちてしまいルーズでだらしない印象を与えます。見た目の整え方だけでなく、快適な着心地にも大きく影響するため、試着時には肩のラインに細心の注意を払い、選ぶよう心掛けましょう。

着丈

ジャケットの着丈は、全体のバランスやスタイルに大きな影響を与える重要な要素です。一般的には、ヒップ全体がしっかり隠れる長さが標準とされ、細身のスーツには標準より短めの着丈、ゆったりとしたスーツには標準より長めの着丈が適しています。

スマートな着こなしには、センターベントのデザインがよく合います。逆に、やや長めの丈は落ち着いた雰囲気を演出できますが、シルエットによっては重たく見えることもあるため注意が必要です。

そのような場合には、両サイドにスリットが入ったサイドベンツを選ぶと、後ろ姿に動きと優雅さが加わります。着丈が体型やスタイルに与える影響は大きいため、脚を長く見せたい時やクラシックな雰囲気を求める際には、細かな工夫が必要です。

袖丈

袖丈は着丈とのバランスが重要です。手を下ろした状態で、一般的にシャツがわずかに見える長さが標準とされ、短めの着丈には標準の袖丈より短めに、長めの着丈には標準の着丈より長めにするのが理想的です。手が長い人の場合、着丈も若干長めにした方がバランスがよくなります。

袖丈が長すぎるとだらしなく見え、短すぎるとサイズが合っていない印象を与えるため、バランスを意識することが大切です。また、肩幅が合っていないと袖丈にも影響が出るため、肩の位置にも気を配ることが重要です。

袖の長さひとつで全体の印象が大きく変わるため、丁寧な確認を怠らないようにしましょう。

胸回りや胴回り

スーツのシルエットを美しく見せるためには、胸回りと胴回りのサイズ感にも注意が必要です。特に胸回りは見た目の印象に大きく影響するため、サイズの選定には慎重を期すべきです。タイトすぎても緩すぎても、全体が不格好に見えてしまいます。

胴回りは、ジャケットのボタンを閉じた際、握りこぶしが横向きに1個分入るくらいが標準のゆとり量です。細身のスーツであれば手のひら1枚分、ゆったりとしたスーツであれば握りこぶし縦に1個分程度が適切です。タイトすぎると内ポケットに財布やスマホを入れた時に、ボタンが留められなくなってしまうので注意しましょう。

また、既製品を選ぶ場合、胴回りのサイズはベントの選択にも影響します。シャープな印象を求めるならセンターベント、少しゆとりを持たせた仕立てにしたい場合はサイドベンツを選ぶと良いでしょう。オーダーメイドなら、胴回りやお尻回りは個別にサイジングできるため、その点での心配はありません。

シルエットに違和感が生じないよう、細部までしっかりと確認することが大切です。

まとめ

スーツ選びにおいて、ベントの違いは後ろ姿の印象を大きく左右する重要な要素です。フォーマル度や動きやすさの違いに加え、シルエットや体型との相性によって、それぞれに最適なベントの種類が異なります。

たとえば、センターベントは若々しさとスマートさを引き立て、サイドベンツは威厳と動きやすさを重視したデザインです。ノーベントは厳粛な場にぴったりで、フックベントは個性を際立たせる装飾として効果的です。

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