近年、結婚式などのフォーマルな場だけでなく、ビジネスの場でも「スリーピーススーツ」を着用する人が増えています。ジャケット・パンツ・ベストの3つで構成されたこのスーツは、上品で整った印象を与え、洗練されたスタイルを演出できる ため、フォーマルな場だけでなく、ビジネスの場でも注目されています。
一方で「スリーピーススーツとは具体的にどのような服装なのか」「仕事中に着ても問題ないのか」といった疑問を持つ人も少なくありません。
この記事では、スリーピーススーツの特徴やベストの種類ごとの印象、着用シーンにおけるマナー を詳しく解説します。さらに、体型に合わせた選び方や、おしゃれに見せるコツ、着用を避けたほうが良い場面 についても紹介します。
スリーピーススーツとは
「スリーピーススーツ」とは、共通の生地で仕立てたジャケット・ベスト・パンツの3点で構成されたセットアップスーツのことです。普段から見慣れているジャケットとパンツのみの組み合わせは「ツーピーススーツ」と呼ばれます。
かつてスーツといえば スリーピースが基本 でした。しかし、時代とともに 現代の生活様式に適応して簡素化 され、現在では ツーピーススーツが最もスタンダードな形式 となっています。そのため、スリーピーススーツは現代でも 「最も格式の高いスーツスタイル」 として認識されています。
スリーピースとオッドベストの違い
見た目は似ていても、異なる素材のベスト をジャケットとパンツに組み合わせたスタイルは 「オッドベスト」 と呼ばれ、スリーピーススーツとは異なる ものです。
そもそも 「スーツ」の語源 は、ホテルのスイートルームの 「スイート」 と同じく 「ひと揃い」 を意味します。そのため、ジャケット・ベスト・パンツが すべて同じ生地で仕立てられること が、本来のスリーピーススーツの定義となります。

スリーピーススーツのベストの種類
スリーピーススーツにおける ベストの選び方 は、着こなしの印象を大きく左右します。ここでは、ベストの代表的なデザインごとの特徴と、それぞれの魅力について紹介します。
襟なしシングルベスト
襟のついていないシングルベストは、スリーピーススーツのなかでもとくにスタンダードなスタイルとして親しまれています。首元がすっきりと開き、V字型の胸元がネクタイやシャツのデザインを際立たせるのが特徴です。
シンプルで無駄のない構造は、スマートで洗練された印象を与え、ビジネスからセミフォーマルまで幅広い場面で活躍します。装飾が控えめなため扱いやすく、スリーピーススーツに初めて挑戦する方や若い世代にもおすすめできる一着です。

襟ありシングルベスト
襟がついたシングルベストは、スーツスタイルに深みと個性を加えたい方におすすめの一着です。襟があることで胸元に立体感が生まれ、クラシックな装いにより重厚で上品な印象を与えます。
首まわりに自然なボリュームが出るため、男性的なたくましさやフォーマルなイメージを演出したい場面にもぴったりです。身につけるだけで全体のシルエットが引き締まり、大人の風格を感じさせるスタイルに仕上がります。

襟なしダブルベスト
襟のないダブルベストは、定番のスタイルから少し個性を加えたい方におすすめの一着です。胴体の前部分に2列のボタンを配したダブルブレスト仕様が、見た目に重厚感と風格をもたらします。シングルタイプに比べて存在感があり、着こなしに奥行きを加えられます。
とくに、落ち着いた年齢層の男性が着用すると、大人の余裕や気品が引き立つ点も魅力のひとつです。襟がない分、シャツやネクタイがきれいに映え、胸元に程よいアクセントをつけたい場面にもぴったりです。

襟ありダブルベスト
襟のついたダブルベストは、スリーピーススーツのなかでもひときわ重厚な印象を与える一着です。前合わせの広がりと2列のボタンが風格を際立たせ、襟の存在がクラシカルで格式ある雰囲気を高めます。そのため、スリーピースに慣れた上級者向けのアイテムといえるでしょう。
このようなデザインは、管理職や人前に立つ機会の多い方に好まれやすく、大人の男性らしさやダンディな印象を際立たせたい方におすすめです。重厚感がありつつも、着こなしによって上品な個性を表現できる点も大きな魅力です。

スリーピーススーツの魅力
ベストのデザインによって印象が大きく変わるスリーピーススーツですが、どのタイプを選んでも共通する魅力があります。ここでは、その魅力を詳しく見ていきましょう。

フォーマルな印象を高める
スリーピーススーツの最大の魅力は、ベストを加えることで装いに格式が加わる 点にあります。
ジャケットを脱いだ状態でも、シャツ1枚のラフさを感じさせず、きちんとした印象を保てる のが特徴です。
特にオフィスワークや屋内業務では、動きやすさを優先してジャケットを脱ぐ場面も多いですが、ベストを着ていれば清潔感や信頼感のある見た目を維持 でき、周囲に好印象を与えることができます。
おしゃれを演出
スリーピーススーツは、ジャケット・パンツ・ベストが同素材・同色で統一されている ため、洗練されたスタイルを実現します。
この統一感が、スーツスタイルに上品さを加え、落ち着いた大人の雰囲気を演出。また、ベストを重ねることでVゾーンに奥行きが生まれ、ネクタイが際立ちやすくなる のもポイント。胸元に自然なメリハリと立体感を生み出し、スマートな印象を与えることができます。
体温調整のしやすさ
スリーピーススーツは、見た目の品格だけでなく、実用性の高さ も魅力です。ベストを活用することで、季節や環境に応じた柔軟な体温調整 が可能になります。
例えば、寒暖差のある日は、ジャケットを脱ぎ ベストだけを羽織ることで快適に過ごす ことができます。出張や外回りなど 長時間の移動がある日 にも頼れるアイテムとして、ビジネスパーソンから高く支持されています。
多彩な着こなし方ができる
スリーピーススーツは、組み合わせの自由度が高く、場面に応じた着こなしが可能 です。
ジャケット・パンツ・ベストをセットで着るだけでなく、ベストを省いたツーピーススタイルも楽しめます。
また、シャツの上にベストを重ねるスタイルもラフになりすぎず、スマートな印象を保てる ので、オフィスでのカジュアルなシーンにも適しています。
こだわりの着こなしができる
ベストは冬の防寒着と思われがちですが、実は夏こそ活躍するアイテムです。その理由は、ベストを着ることでジャケットを脱ぐことが許される からです。
かつては、スーツの着こなしとして 人前でジャケットを脱いでシャツ1枚になるのはマナー違反 とされていました。現在はそこまで厳しくはありませんが、スーツにこだわる人にとって 「夏のスリーピース」 という選択肢は、品格を保ちつつ涼しさを確保できるスタイルとして注目されています。
スリーピーススーツの着用場面
さまざまな魅力のあるスリーピーススーツですが、すべての場面に適しているわけではありません。ここでは、スリーピーススーツの着用に向いている場面と、避けたほうがよい場面について、それぞれ具体的に解説します。
着用に向いている場面
着用に向いているのは、以下の場面です。
それぞれの場面について解説します。
ビジネスシーン
スリーピーススーツは、ビジネスシーンにおいて信頼感と品格を演出するアイテムとして活躍します。とくに、ベストを着用することで、ジャケットを脱いでもきちんとした印象を保てる点が大きなメリットです。
ただし、初対面の取引先や格式に敏感な相手と接する際には注意が必要です。スリーピースが「威圧的」あるいは「偉そう」に映ることもあるため、相手の立場や職場の文化に応じて、ベストを省いたツーピーススタイルに切り替える柔軟さを持っておくと安心です。
結婚式
フォーマルな印象と華やかさを兼ね備えたスリーピーススーツは、結婚式への出席にも適しています。ベストを加えることで装いに奥行きが加わり、ほかのゲストと差をつけることが可能です。
近年では、必ずしも黒にこだわらず、ネイビーやグレーなどのカラースーツや柄入りのスタイルで参列する人も増えてきました。ただし、あくまで主役は新郎新婦であるため、派手すぎない控えめな色やデザインを選ぶことが基本です。
大切な場面で礼節を守りつつ、自分らしいセンスもさりげなく表現できるでしょう。
着用に向いていない場面
一方で、以下のような場面ではスリーピーススーツの着用を避けたほうがよいとされています。
それぞれの場面について解説します。
就職活動
就職活動では、服装が与える印象が選考結果に影響を与えることもあります。スリーピーススーツは洗練された印象を与える一方で、見る人によっては「自己主張が強すぎる」と感じられる可能性があります。
とくに、新卒の採用面接では、控えめで誠実な印象が求められるため、格式の高さが裏目に出るリスクも考慮したほうがよいでしょう。一方で、アパレル業界やベンチャー企業などでは、ファッション性の高さが好印象につながることもあります。
業界や企業ごとの文化や雰囲気をしっかりと調べたうえで、適切な装いを選ぶことが重要です。
家族葬などの小さなお葬式
スリーピーススーツは本来、格式ある正装として位置づけられており、葬儀ではむしろ着用したほうが礼を欠かさないとされていますが、最近では家族葬など小さなお葬式が増えており、喪主や遺族が簡易的な礼服を着用している場合は着用を避けたほうがよいかもしれません。
本来であれば正しい着こなしも、ケースによっては場違いになってしまう可能性があるので、TPOに合わせた着こなしを心がけるとよいでしょう。
スリーピーススーツの着こなし方
スリーピーススーツをスタイリッシュに着こなすには、いくつかのポイントを押さえることが大切です。ここからは、スリーピーススーツの着こなし方のポイントについて詳しく解説します。
ベストは体にフィットするサイズを選ぶ
スリーピーススーツをきれいに着こなすには、ベストのサイズ感が非常に重要です。丈やフィット感が合っていないと、全体のシルエットが崩れて見える原因になります。
目安としては、ベストの裾がベルト部分を軽く隠す程度の長さが理想です。短すぎてシャツやベルトが見えると、だらしない印象になってしまいます。反対に長すぎるベストは不恰好に見えやすいため、バランスには注意が必要です。
実際の着用シーンを想定しながら、動いたときにシャツの背中が浮いたり、腰まわりに余計なゆとりが出たりしないかを確認して選ぶと安心です。
Vゾーンの見せ方は体型に合わせる
ベスト選びでは、Vゾーンの開き具合にも注目しましょう。胸元のシルエットは、着る人の体型によって印象が大きく変わるため、見た目のバランスに直結します。
細身の体型の方には、浅めのVゾーンで襟付きのデザインが適しています。襟が加わることで胸もとに立体感が生まれ、全体に厚みと存在感を与えられます。
一方、ふくよかな体型の方には、深めのVゾーンで襟のないタイプがおすすめです。胸元がすっきり見え、スリムでスタイリッシュな印象を演出できます。
このように、Vゾーンの深さや襟の有無をうまく調整することで、自分の体型にあったシルエットを引き出すことが可能です。
着用時のマナーを把握しておく
スリーピーススーツを上品に着こなすには、基本的なマナーを理解しておくことが欠かせません。
たとえば、襟にボタンが付いたボタンダウンシャツはカジュアルな印象を与えるため、スリーピースのフォーマルなスタイルにはあまり適していません。ビジネスシーンでは、ドレスシャツとの組み合わせが一般的です。
細やかなマナーを押さえておけば、場面にふさわしい着こなしができるでしょう。
ボタンの色やデザインにこだわる
ボタンの色やデザインも注目ポイントです。スリーピースは前面にボタンが縦にズラリと並ぶため、ツーピースに比べボタンが目立ち選ぶ色やデザインによって印象ががらりとかわってくるからです。生地の色や質感に合わせてボタンを選ぶことで、全体の印象がおしゃれになります。
たとえば、ネイビー系のスーツには明るめのブラウンや水牛調のボタンを合わせると、落ち着いた印象に軽やかさを感じさせるアクセントになります。グレーのスーツには、ダークトーンのボタンを選ぶことで全体が引き締まり、クールな印象に仕上がります。
ベスト姿で過ごす場面も意識しながら、ボタンの色味や素材を検討することで、より自分らしい着こなしが可能です。
スリーピーススーツはオーダーメイドがおすすめ
スリーピーススーツを選ぶなら、既製品よりオーダーメイドで仕立てるのがおすすめです。自分の体型に合わせて作ることで、フィット感が向上し、着心地も格段によくなります。
さらにオーダーメイドでは、生地・ボタン・裏地のデザインまで細かくカスタマイズでき、自分だけの一着を手に入れることが可能です。無駄なゆとりや締めつけがないため、スーツ全体への負荷も減り、結果として長持ちしやすくなります。
まとめ
スリーピーススーツは、同じ素材で仕立てたジャケット・ベスト・パンツの3点で構成されるスタイルであり、フォーマルさと品格の両方を備えています。ベストを加えることで胸元に奥行きが生まれ、装い全体に重厚感と立体感を加えられます。
ビジネスから結婚式まで幅広いシーンに対応できる一方で、就職活動や葬儀などでは控えたほうがよいため、TPOに応じた使い分けが必要です。着心地やシルエットにこだわりたい方には、オーダーで仕立てるのがおすすめです。
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